『姿は見えても…あたしは実体がないから…。ごめんね…。
紫月に触れてもらいたいのに…あたしも、紫月に触れたいのに……出来ない。』
心花は紫月さんに手を伸ばして、触れられる寸でのところでその手をぎゅっと握り込んだ。
「だったら…!どうか…甦って欲しい……!」
『……。』
すがりつくように心花に訴える紫月さんの必死の声に…心花はゆるく首を振った。
『…祈咲の身体と命を奪って……?
そんな生なら…あたしはいらないの。』
「心花……?」
心花の答えに紫月さんが凍りつく。
『それをすれば、祈咲のオオカミもあなたと同じ思いをする。
…あたしがここにいられるのは、ずっと傍にいた祈咲と…命もかえりみずあたしに神秘の血を与えてくれた…十夜のおかげ。
その想いすべて…犠牲にしろと言うの…?』
「だけど、私がいる……!おまえの傍に…っ」
それでも食い下がる紫月さんに、心花は悲しそうに笑った。
『あたしもそれをずっと願ってた。あなたとずっと一緒にいられたら……だけど、
笑え…ないわ……紫月。
泣きながら、あなたの傍にいられない。
涙の上に作られた幸せなんか…あたしには重すぎる。
きっと心が壊れてしまう…。
あたしは、笑顔で、あなたの傍にいたかった……!』
「……!!」
パッ…と、涙が散って
キラキラと
キラキラと
光の欠片のように……輝いた。