ぼんやりと朧気な光が白百合から放たれ始めた。



『なに…?…温かい…』



それは力が巡る様だった。



『月の光が力を誘発すんのかも知れねぇな…。

月は人狼の力を高めるんだ。』



『すごい…!あたし…あたし…っ、』



『まだ泣くな…。喜ぶのは完全に姿が見えるようになってからだ。』



言うなりその細い茎に歯をあてて噛みきると、そのままくわえて辿った道を引き返すために走り出した。



自分の血にドロドロに染まって、爪でめくりあげた土までついて…もはや俺の姿は目もあてられねぇ。








『…似てるのか?…祈咲と』



『双子だから…きっとね。』



なんとなくかけた声に少しはにかんだ返事が返ってきて…祈咲とよく似た声に祈咲の笑顔を思い出す。



『…早く祈咲の笑った顔が見てぇなぁ…。

おまえは…紫月に見せてやれよ?』



『……っ!』










血にまみれた百合はその姿とはまるで不似合いな…清らかな涙声で『うん』と返事をした。










愛しい人に早く逢いたい――…









――――二人分の想いは俺の傷ついた足をグンと速く動かした。