『気づいてくれて…ありがとう…。
あなたなら、あたしの声が聞こえるんじゃないかと…思った…。』
百合の花はまるで微笑んででもいるかのような声音で、俺に話しかけ風に揺られていた。
『紫月の…花嫁か?』
『…そして…祈咲の姉。あたしは身体を持たないから…百合の意識を借りているの…』
すぐに返ってきた返事。
この百合の中に、間違いなく…消えた花嫁の魂があった。
百合は絶え間無く風に揺れる。
すぐにでもここから、飛び出して行きたそうに…
『祈咲が…頑張ってくれたから…あたしも頑張ろうと思ったの。
祈咲をあたしの犠牲になんてしたくない…。
…自分で、伝えたい。
紫月は…あたしのオオカミだから…だから…
…紫月、に………逢いたい……!』
…吹いた風に散った夜露は…涙のようだ。
――――《力を貸して》
『…当然だ。』
迷うことなく、頷いた。