ずいぶん走った。…もう、紫月の声も聞こえなくなった。
深い真っ暗な森の奥…。
生い茂る草や木立の中を突っ切る。
びしびし顔にあたるそれがうっとうしくてたまんねぇ。
『………。』
…走りながら、なんか…色んなことを問われてるような気分だった。
当主としての能力とか
仲間を救う力とか
祈咲を守りぬくための、男としての力とか…
誰かが俺を試してんのかよ?
『………!』
視界が急に拓けてくる。
広すぎだろ…うちの山…。
知らない野原が、目の前に広がった。
さぁ、出来るかどうか…
――――答えはこの先に、待ってる。
『……呼んだか?』
それは月の光を浴びた
他の花とは別に…ポツンとたった一輪だけで咲いている白百合…。
『ありがとう……祈咲の…オオカミ……』
俺は、出来るぞ。
…祈咲。