「おまえなぁ、毎日毎日この俺を走り回らせやがって………。」
そう愚痴りつつも、本人は息すらきれてない。
「だって、あんたが追いかけてくるんじゃない!」
「当たり前だろ?………逃がすかよ……」
ニヤリと笑いあたしの顎に手をかける。
ぐっと上を向かされて…おかげで視線が外せない。
たちまちあたしの胸はドキドキ騒ぐ。
顔だって…熱い。
でも視線は意地ではずさないまま、キッと睨む。
すると狼は、はぁ…と、ため息をついて
「俺はなぁ…勘の他にも目も耳もいいんだよ。」
「………!?」
そう言って、あたしの胸元…心臓のあたりに人差し指をトン…と置いた。
「俺にこの音が聞こえてないとでも?」
「………!!!」
――――すべてこれが物語ってる。
だから観念しろ、と夜色の瞳があたしに迫った。