「……嘘だ…嘘だ…!!
おまえの妄想だ!!
私の幸せは…心花をこの手に抱くことだけだ!!
私の心花がそんなことを言うはずがない……!!」
「紫月さん……!」
紫月さんは狂ったかのように叫び…鋭い爪で地をかいた。
軽々と抉られた土が辺りに飛び散る。
痛々しいその様に胸が痛み…あたしは顔を反らしてしまった。
「……!」
隣で黙って見ていた十夜が急に何かにピクリと耳を立て、立ち上がった。
「……十夜?」
声をかけてみたけど、聞こえていないようで十夜はス…と顔を空に向けた。
「…ォオオーーーーン……」
「……!」
十夜は空に向かって伸びやかに遠吠えを始めた……。
月夜に吠える狼の美しさに思わず釘付けになる。
そして遠吠えを終えると…未だ酷く暴れる紫月さんを見て、次に心配そうにあたしを見つめ……
「…すぐに戻る。」
「十夜……!?」
そして十夜は、意を決したように……駆け出した。