あたしは苛立つ十夜の身体に手を伸ばした。
いつも艶やかで美しい毛皮が所々血と泥で汚れてる…。
そっと触れると、ピクリと反応して…清んだ夜空のような夜色の瞳があたしを見つめた。
「おまえを…ほんの僅かでも…危ない目にあわせたくねぇのに……っ」
ぎゅっと瞳を閉じた十夜の言葉に胸が疼いた。
あたしを…みんなを守る為に十夜は戦ってくれている。
濡れた毛皮に恐る恐る触れれば…手の平は赤く染まった…。
「……っ。」
それを握りしめて、十夜にしがみついた。
「あたしも、十夜に傷ついて欲しくない…っ」
「……!」
「二人に…傷つけあって欲しくない…!
それを、《あたし達》は望んでるから……!!」
それが…あたしと心花の望むこと。