感激に胸を熱くするあたしとは裏腹に、橙枷さんは普段の調子を取り戻したかのように冷静だった。
「若様の花嫁を危険に晒すとわかっていて、紫月の元に行かせることの根拠は?」
小さな二人に遠慮のない口調で、高圧的に見下ろして…
周囲の狼達もどこかハラハラしながら見守っている。
だけど二人は少しも臆することなく、赤と蒼の瞳を煌めかせた。
「やだなぁ…。大人は耄碌(もうろく)しちゃったんじゃないの?」
口の端を持ち上げた蒼ちゃんの表情は、まるで十夜がよくするような不適な笑みに見えた。
「ほんと、ほんとー。そんなの解りきったことなのに。」
同じように笑う紅ちゃんの顔もどこか挑発的で…やんちゃそのもののように見える。
狼の姿をしていても、元気な双子ちゃんの表情は豊かそのものだ。
――――そして二人は自信たっぷりに言い放った。
「「決まってるじゃん。――《直感》だ。」」
そのセリフに、この場にいる人狼達が言葉を失った。