そして、



『…残す必要のない黒き本をまた残したのは、私の一存だった。

残すべきではなかったのに…

結果、おまえ達を苦しめることになってしまった……。』



…そう言ってお父さんは苦しそうに目を伏せた。



『どんな形でも…雛菊や白百合、…咲黒がここに生きた事実を…残したかった僕のエゴなんだよ。

咲黒の…兄の全てを許すことはきっと無理だ。

けれど、

憎んででも忘れたくなかった。

でも、それはもう、憎しみじゃなくて



……《愛》という想いに、近いのだろうね……。』






――――真神咲黒という人は



お父さんにとって、一族を裏切り花嫁を奪った憎むべき存在で…



尊敬した…大好きなお兄さん……。









死にたくなるほどに苦しんで……



でも、それすらを






《愛》と呼んで……。