あの後―――……
月を見上げ、お父さんは言った。
『人狼にとって…己の魂の半分を持つ花嫁は、命そのもののような存在だ。
花嫁を失うことは、死にも値する……。
悲しい事実だが、廻り逢えぬ人狼が自ら死を選ぶこともある。』
『………。』
それは人狼の性とでも言おうべきことなのか……
魂の半分を持つ運命の花嫁の存在は彼らにとってそれほどまでに重い。
遥か昔から花嫁にまつわる…悲惨な出来事が起きている事実にけして大袈裟なことではないと感じた。
十夜はあたしの手をきつく握りしめるとぐっと口を引き結び、真剣な表情で聞いていた。
実際に花嫁を失ったお父さんの言葉は、…重かった。