「立ち尽くして眺めていたよ。

ずいぶんと元気に泣いていて…それを必死に千比絽さんがあやしていた。


……やがて十夜は泣き止んで、千比絽さんはそっとテラスに置いてあるゆりかごに十夜を乗せるとその場を離れた。」



お父さんに顔が曇り始める……。あたしはそれに気づいて、笑顔は次第になくなった。



再会の時は二人にとって笑顔で始まるものじゃないことに気がついたから…。



「吸い寄せられるように…十夜に近づいた。

眠る姿に……兄の姿が重なった。

苦しみだけが私の心を支配した。

何故…と、雛菊の死に顔が浮かび…気づけば――


震える指を……十夜の首…に……」



「………!!」









花嫁の命を奪われた人狼と奪った人狼のよく似た息子……。



共通するのは去っていった黒き狼との悲しすぎる……繋がり。



それはやっぱり…生半可なものじゃない……。