――雪夜―― 広い廊下を走り 見上げる長身の広い背中に飛び付いた。 『兄さん!勉強教えて!』 『…しょうがねぇヤツだ。どこが解らない?』 ゆっくりと振り返るとその輝く黒い瞳が自分を捉えて細められた。 その苦笑した顔が堪らなく好きだった。 そんなふうに 物心ついた頃には 私はいつも、兄の背中を追いかけていた――