「ぉ父、さ…ん……?」



恐る恐る声をかけたあたしに、



美しい白い狼は、そのルビーのように赤い瞳を細め穏やかに微笑んでいるかのように見えた。



「私はパパと呼んでもらいたいんだけどねぇ……。

ごきげんよう、十夜の可愛い花嫁。

今宵は素晴らしい月夜だね。」



眩しそうに月を見上げ狼の姿をしていても相変わらずその耳に心地よい声は穏やかで…



きっと全てをわかってここにいるはずなのに



何も変わらない十夜のお父さんのような気がした。