「泣くな、泣き虫。」
「………っ。」
からかうように言いながら、十夜には優しい笑みが広がる。
止まらなくなったあたしの涙を十夜は優しく親指で拭う。
「俺の内に眠るモノが何者だろうと…踏ん張って、受け止めねぇとな。」
「………!」
ほんの少しの切なさを覗かせた笑みを溢し……
十夜はゆっくりと振り返る。
月明かりだけの静かな庭園。
木立が微かに揺れた………。
そして、十夜が静かに口の開く――
「…………教えて欲しい。全てを……
………親父。」
「………!?」
木立を分け入り
雪のように真っ白な狼が………
――――十夜を見つめ立っていた。