二人でくっついたまま、しばらく無言で月を見た。



煌々と輝くまるい月。



優しい光が降り注ぐ…。



――――どうか十夜の不安でしょうがない気持ちを和らげて下さい。



うまく言葉をかけることも出来ない…情けないあたしは



かわりに十夜を抱き締める腕に力を込めて、ひたすらそう…月に祈る。



心の中の祈りが聞こえるはずないのに…



「ありがとう……祈咲。」



「………っ!」



あたし、何にもしてないよ。



それなのに十夜は、柔らかく微笑んで…あたしの髪をそっと撫でた。



あたしが泣いたらダメだと、唇を噛んで耐え…何もしてないんだと頭を強く振った。



十夜はそんな泣きそうなあたしにすぐ気づいて



「………!」



「………。」



噛みしめる唇に、優しくキスをした。



「祈咲がいるから…俺はこんな情けねー弱音を吐ける。

祈咲がいてくれて、よかった。……おまえがいれば、俺は大丈夫だ。」



「………っ。」



月の光の下で



笑う十夜の綺麗な顔に堪えきれなかった涙が一筋、頬をつたった。