「気持ちを落ち着けてぇんだ…。」
「………!」
十夜は少しだけ瞳を開けて、月を見上げたまま静かに言った。
「こんな…気持ち、初めてだ。
早く親父のとこに行かなきゃいけねぇのに、情けねーくらい……怖い。」
いつも自信に満ち溢れてる十夜が……
まるで…行き場を無くした子供のように見えた。
真神咲黒、亡くなった母、叔母、16年前、黒き狼―……
頭のよい十夜が、このキーワードに隠された秘密を想像しないわけがない。
――――だって十夜は
「……親父の、本心を聞くのが……恐い…っ」
「十夜……!」
うずくまり、ぎゅっと自分を抱き締めた十夜に堪らず駆け寄った。
そしてきつく抱き締める。
無理もないよ…。
だって、十夜は
お父さんが、……大好きだから。
「………っ。」
お父さんの綺麗で柔らかな笑顔を思い出し、あたしの胸も…ぎゅっと締め付けられた……。