「いい色に染まったもんだなぁ…?

この数日でどれだけ仲間の血を浴びやがった!?」



怒りを抑えられないままに十夜が紫月さんに向かって声を荒げる。



あたしはそのセリフにギクリとした。



明らかに変色した牙を見て十夜は言った。



あたしの夢に現れたあの黒い狼と一緒……でも、まだ紫月さんの牙の方が鮮やかな紅に見える。



十夜はこの奇妙な牙の意味を知ってるの…?



「ほう……?この牙を見てそれを言うとは、黒き本の話でも聞いたと見える。

しかし、その暢気な様子では――全てを知ってはいなさそうだ……。

さすがは若君……皆に大切にされている。」



「………!!」



どこか馬鹿にでもしているような口調で、ニヤリ……不適に笑った紫月さんに



十夜の肩が強ばるのを、見てしまった。



「この牙はまだまだ染まる……。もうすぐだ。

愛しき花嫁…私の心花にもうじき逢える。」



紫色の瞳を細め……恍惚とも言える表情で紫月さんがつぶやいた……。