「………十夜……十夜…?」



「………!……悪い…。」



何度目かの祈咲の問いかけにハッとして、ばつが悪い顔で謝る俺に



祈咲は一瞬心配そうな顔をしたけどそれ以上何も言うことなく前を向いた。



祈咲を迎えに行った帰りの車中で、俺は祈咲に話しかけられたのにも気づかずに……



ただ自分の纏まらない思考に意識を漂わせていた。



車を運転する橙伽とバックミラー越しに目が合った。その視線も俺を心配しているようだった。



何も答えられずに小さく溜め息をつくと流れる景色に目を向けた。



見慣れた景色が走る車から次々と移り変わる。



ただ無言でそれを眺めていた。







――――紫炎爺から、あれ以上の話は聞けなかった。



あの黒い本に関しての全てを知るためには現当主である俺の爺さん…真神夜一の許可がいる……。



それを聞いた俺は









どこか――ほっとしている自分に、気がついた。