16年前……!?



この本に記されている惨劇は、たった数十年前に起こった話なのか……!?



俺は静かに俺を見つめる紫炎爺を



目を見開き見つめ返しながら驚愕に言葉が出なかった。



「……始まりは500年前だった。

一人の人狼が花嫁を失い、己を見失った………。

人狼は、情に厚く一族の繋がりを重んじる。

故にそれを断ち切る者は呪いを受ける……。

しかし、呪いと共に浴び続けた人ならざる力を持つ人狼の生き血により――力が宿る。

それこそが禁忌の力………。

かつて、我ら一族の始まりがその真神(マカミ=狼)に命を救われた力にも通じる……

死した者の魂をそれに限り無く近い器によって甦らせる―――神の力。


そして、新たな《黒き狼》が16年前の惨劇を産んだのだ………」













――――《黒き狼》



そう言って微かに目を伏せた紫炎爺に



俺の心臓が――ドクリ…と嫌な音を立て、えも知れぬ不安を渦のように俺の中に残した。