――十夜――




祈咲を一人、鈴木 萌花が入院している病院に送った後…



俺は橙伽を伴い真神の敷地内でも奥ばった所に建つ、紫炎爺の屋敷を訪ねていた。



紫月の持ち出した古い記述を載せているという古書の内容を、聞くために。



「………おいでのようですね……。」



「…………。」



つぶやくように言った橙伽の声に立ち止まる。



紫炎爺は門の前にいて、のんびりと陽射しを浴びながら花壇の手入れをしていた。