辺りは草木の生い茂る暗い暗い森の中………。



立ち並ぶ杉の木の間から暗闇にぽっかりと浮かぶのは皿のような丸い月。



あたしはそこに一人、佇んでいた。








――――グルル……



それは獣の唸り声だった。



あたしのよく知る…………。



だからあたしは迷うことなく木立をかき分け夜露に湿る雑草を踏み締め………声を探して進む。



その先にいるのはあたしの愛しい獣であると信じて―――