大きな紫色の狼……紫月さんの姿が脳裏を過るだけでゾッとする。
「何が《暫く》だ………!何を企んでいようと誰がまた渡すかよ!」
苛立たしげに吐き捨てて十夜の表情はますます険しくなった。
「いったい何の目的でこのような酷い(むごい)ことを………。
もはや同じ人狼とは思えません。
情に厚く、仲間を大切にする………それは真神の誇りであるというのに………」
やるせないといった様子で橙伽さんが溜め息を吐き出しゆるく首を振った。
「…………誇り…か…」
十夜はポツリとつぶやくとハッとしたように顔をあげた。
「橙伽。
ソレに繋がるんじゃねぇのか………?
人狼が誇りとすることをかなぐり捨てることによって得られる《何か》………。
あいつは明らかに何かの目的の為に動いてんだからな………!」
「………っ!
直ちに細かい情報を集め直して参ります。」
「紫月が持ち出した古い記述を記した古書………それの内容を覚えている者を探せ。
それが、紫月のやろうとしてることの答えだ。」
「…………!!」