「おそらく。

我らの《血》が目的だと思われます。」



十夜はうんと難しい顔で一つ頷いた。



「祈咲をいきなり解放したのもこの為だろうな。

どこに留まる事なく手当たり次第に同胞の血を求めて動く為に、祈咲を手元に置いておくのはリスクが高ぇ……。」



そして気づかうようにあたしの肩を抱いて、ギリッと歯を食いしばった。



十夜の言った言葉にあたしはふと思い出した。



「そういえば………あたしの鎖を外した時、

『《暫く》君に用はなくなった。』

『今あの能力高き狼とやり合うつもりはない。』って、そう言って

最後に………『また逢おう………《器の花嫁》』…って、そう言ってた………。」



まざまざと蘇るあの時の紫月さんの紫色の瞳と言葉を………十夜の手を握りしめて、何とか自分の心を落ち着けようとした。