――十夜――






夜の闇に紛れ風のように地を蹴り………薔薇の甘い香りを追いながら……



俺は紫月のことを考えていた。



いろいろとふに落ちねぇことが多すぎる……。



橙伽の言った



『…あれとて人狼に違いありません。』



その言葉を聞いてから俺の中に生まれた疑問。



――――そう








特殊とはいえ、人狼の本質がそう簡単に変わるとは思えねぇ……。








つまりは、あいつが祈咲を狙う理由だ。



人狼は情に厚い。



祈咲が双子の片割れとはいえ、所詮は自分の花嫁とは別物だ。



魂の欠片を宿しているからといって、あいつがほしいのは《祈咲》でなく《自分の花嫁》だろう……?



祈咲が本物の花嫁の代わりになり得るとは思えねーんだよな……。