――十夜――





夜風に漂い微かな薔薇の香りが鼻孔をくすぐる。



切ないほどに甘くほのかなその香り……



時が過ぎるごとに薄まり



やがては消える……祈咲への手掛かり。



「…………。」




紅と蒼が血を流し……



祈咲が連れ去られたこの場所で



半分に欠けた月を見上げてただ立ち尽くしていた。