「そこで、紫炎様は《お祝い》と称して…この薔薇を一輪姫君に贈ったそうです。」
折れてなお強い香りを放つ可憐な薔薇は祈咲に似合いの淡いピンクだった。
紫炎爺らしい心使いだと思った……。
ただひとつ、疑問が浮かぶ。
「…そういえば、《お祝い》って何のだ?」
祝われるようなことが浮かばない。
それに橙伽は笑みをこぼした。
「…昨晩…若様には心当たりがあると思うのですが……?」
意味深に笑い、「私も姫君にお祝いを申し上げさせていただきました」…などと言う。
「……はぁ?…昨晩だぁ…?」
考えて、ふと思いつくのは……
「………!?…まさか……っ、のっ、覗いてんのか!?てめぇらは!!!」
「………。」
思いつくのは……
昨晩、祈咲を抱いたということだけじゃねぇか……っ。