――――ズシャッ…!ズシャッ…!!
鋭い爪で地面がえぐれ、土が巻き上がる。
敷地の森の奥へ奥へとひたすらに駆けた。
「………ゥ…ガァッ!!!」
――――ドォン……!!
でかい楠木に思いきり身体をぶつける。
地を揺さぶるような衝撃に…バサバサ…ッ!幾羽もの鳥が羽音をたて一斉に飛び立った。
「…………ッ……!!!!」
――――ドォン…!ドォン……!!
何度も何度もぶつかり続けた。
身体を巡る沸き立つような熱に痛みすらわからねぇ。
小枝に引っかけたのか…目の上を切って流れた血が目に入った。
紅く染まった半分の世界……。
それに血塗れの双子が浮かぶ……
弟のように可愛がってきた紅と蒼……。
小生意気なクソ餓鬼にあんな姿は似合わねぇんだ……!
身体を傷つけ…それ以上に幼い心を傷つけた。
拐われクスリまで使われた鈴木萌花
疲れきった灰斗のつらそうな顔
紫月……!紫月……!!!
許せねぇ!!!
――――ドォン……ッ!!!
「……祈咲ぁ……!」