「すまなかったな………十夜…。」
「謝ることじゃねぇ……。
…鈴木の様子は?」
…疲れきった顔をした灰斗に会ったのは日が落ちてからだった。
真神の本家の一室で、灰斗はソファにもたれるように座り込んで…くしゃりと短い髪をつかんだ。
「鎮静剤を随分使ってようやく落ち着いた。
身体に害のあるものじゃないらしいけど、それなりのクスリだってよ……。」
「………。」
これほどまでに弱りきった灰斗を見るのは初めてだった。
俺はかける言葉すら見つからなかった……。
「姫君ちゃんが心配だ。
紅と蒼にしろ…萌にしろ…アイツはもう普通じゃねぇよ……っ!!」
「………っ!
…おまえは自分の花嫁心配してやってりゃあいいんだ……っ。
…少しは休め。
倒れちまうぞ。」
こんな時でも、俺を責めもしねぇで…灰斗は祈咲の心配をした。
何が…次期当主だ…。
「情けねぇ……っ。」
一言吐き捨て立ち上がる。
「……十夜。」
「カタは必ず俺がつける。
…悪かった。」
「………!!」
振り返らずに前を向いたまま、呟くように言って部屋を出る。
「紫月……!!!」