そして、彼は静かに口を開いた。
「彼女は君の親友で…灰斗の花嫁だとか……?
灰斗は…中々、花嫁を見つけられぬ数少ない同志だった。
それが君が現れた途端、灰斗の花嫁が見つかった。
…これがどういうことかわかるかな…?」
なんの感情も見えてこない紫の瞳が、ひたとあたしを見据えた。
「…………。」
あたしがなんの言葉も出せずにいると、紫月さんがゆっくりと口を開いた。
「まずは、私の花嫁が消え去り君だけが生まれた……。
そして……同志がいなくなり、可愛がっていた双子も今では君のモノだ。
君は、私からどれだけのものを奪えば気が済む……?」
「………!?…そんな……あ…あたし…は……っ…」
そんなつもりなんてまるでない……。
だけど、ひとつひとつを突き付けられて……
あたしは何も言えなかった……。
「ならばいいだろう……?
奪っていった本人は…私がこの手にしたとて……。」
「………っ!!」
冷たいものが背中をつたう……。
あたしに向かって、
冷たく微笑む男が怖くて仕方ない。
ゆっくりと長い腕をあげて……
あたしに向かってその手が伸びた。