車、人、木、道路……また…車………
あたしはなんの感情もない瞳で…車中から次から次に移り行く景色をぼんやりと見つめていた。
「……殺してはいないよ。」
車の中で、彼は前を見据えたままそう言った。
「…殺すほど酷いことをしたわ……。」
横たわる小さな身体が目に焼き付いて離れなかった。
…『信じてた』
そう叫んだ紅ちゃんの悲痛な声も……
胸をえぐられるほどの気持ちになった。
…あんな裏切りはあんまりだ。
ずっと信じていた子供を酷いやり方で傷つけた。
あたしを手に入れる為だけに……
ぜんぶ、あたしの………せいだ……。
力無く横たわる小さな姿が瞼の裏に焼き付いていた。
ぎゅっと固く目をとじて零れ落ちそうな涙を必死に堪えた。