「てか…違うよ!問題はそこじゃないのっ!

だいたい助けたお礼に嫁になれってどうなのよ!?」



あたしは頭を抱えてその場に座り込んだ。



これじゃあまるで子供の頃に読んだおとぎ話だ。



「それは違う。」



「何が違うのっ!?」



きっぱりと言い切る狼をあたしはキッと睨み付ける。



だけどマガミトウヤは怯むことなく、まっすぐにあたしの瞳を見返してきた。



「俺は、ずっとおまえを探してた。

俺達の血に眠る直感と運命を信じて………」



「直感……?」



マガミトウヤは静かに話し出した。



「助けたお礼じゃない。おまえ…祈咲は俺の《運命の花嫁》。

俺はおまえの為に生まれ、祈咲は俺の為に生まれたんだ。

………俺の直感が間違いなくそう言った。」



マガミトウヤの低くて甘い美声があたしの心にスルリと入り込む。



なんだかスゴイコトを言われた気がする。



思わず、この狼の言っている《花嫁》って言葉が軽いものじゃないと感じてしまうくらい……



ツッコミどころ満載なはずなのに



その瞳はあまりに真剣な色を宿すから……



あたしはただひたすらに夜色に輝く瞳を見つめ返すことしか出来なかった。



月の光に照らされた狼の横顔は、やっぱりとても…綺麗だった。