二人を見送ったあたしは紅ちゃんと蒼ちゃんに会いにそのまま二人を探しに出かけた。



広い広い敷地の中はどこもかしこも綺麗に整えられていて……



綺麗な花や植木を見ながらウキウキした気持ちで歩みを進めた。



庭を歩くようになって気づいたことがある。



それは、



…ここで間違いなく暮らしているはずの他の人狼達の花嫁の姿を見ないこと。



不思議に思って十夜に聞けば…







『俺もよくは知らねぇんだけど…昔っから花嫁は、あんま自分の家のテリトリー以外には出ねーんだよな…。

個人の家の敷地っつっても広ぇから、ここに顔見せに連れられて以来会わない花嫁もいるくらいだ。』



な?と、十夜が後ろに控える橙伽さんを振り返る。



『私にも花嫁がおりますが、いつの間にかこの事は理由のない古(いにしえ)よりの習わしのようになっておりますので…自然とそのように…。

先に出歩く花嫁もおりませんから、花嫁の方でも当たり前にそうなってしまうようですね。

個人の敷地も広く不便はしませんし。』



『そ…そうなんですか……。』



淡々と語る橙伽さんにも花嫁(つまりは奥さん)がいたことにちょっとした衝撃を受けながら相づちをうった。



こんなに広い広い敷地に綺麗な自然や庭園があるのに…



『…ちょっともったいない…』



錦鯉がパシャンと跳ねる美しい池に見惚れながら、思わずそんな呟きをもらしてしまっていた。



『…別に俺はそうしろとは言わねぇよ。

特に禁止されてるわけじゃねぇんだ。出歩くのもおまえがそうしたけりゃ好きにしたらいい。』



『十夜……』



あたしの気持ちをいつでもお見通しな十夜は、にっこり笑ってあたしの頭に大きな手をポンと乗せた。



いつもあたしの気持ちを最優先に考えてくれる十夜に、あたしは抑えられない満面の笑み。



『ありがとう…。』



はにかみながらそう伝えた。



『~~~!』



『……!!』



十夜はいきなりガバッとあたしに抱きついてあたしの髪に顔を埋めると…



『ずっとおまえの傍にいてぇ…』



『………!』



溜め息まじりにそう言ってくれた……。