紅ちゃんと蒼ちゃんにとっても



きっとこんなふうに甘えられる存在が紫月さんだったんだろうな……。



不意に二人の顔が浮かんできて切なくなった。



だけど気をとり直すように顔をあげて十夜に笑顔を向けた。



「行ってらっしゃい!十夜!」



「行ってくる。ちゃんと待ってろよ……?」



あたしの頬に軽くキスをくれて、十夜はやっぱり少し心配そうだった。



「大丈夫。……待ってるよ……十夜。」



笑顔で約束をして車に乗り込む十夜を見つめた。



「では、姫君、行って参ります。」



「はい。橙伽さんもお気をつけて…」



あたしに軽く頭を下げてくれる橙伽さんにあたしもお辞儀を返しながら微笑んだ。



「あぁ、言い忘れておりました。

…おめでとうございます。

では、行って参ります。」



「……?…ありがとうございます…??」



わざわざ振り返ってそんなことを言う橙伽さんにあたしは意味がわからなくてきょとんと首を傾げた。