「絶対に敷地の外には出るなよ?
紅と蒼から離れないこと。……いいな?」
「だから、あたしは子供じゃないの!」
どうしても外せない用事の為に出かける十夜は、さっきから延々とこれを繰り返してる。
「やっぱり一緒に…」
「い·や !」
「~~~~!」
間髪入れずにそっぽを向いて、グイッと十夜の背中を押した。
「…ダメよ。
…しっかりお仕事してきてよね?次期当主さま。」
「~~~…わかった……。」
意地悪かな?と思いつつ、プレッシャーをかければ…十夜は溜め息をついた後、諦めるようにそう言った。
「……橙伽、笑うな。」
「……これは失礼を。」
後ろでは控えていた橙伽さんがクスクスとその光景を見て笑ってる。
「さすがは姫君。
若様を上手に操縦するすべを心得てございますね。
私も姫君がいらっしゃると事が非常にスムーズに進むものですから…仕事が実に楽です。」
「悪かったな……手のかかる主で。」
そんな橙伽さんに十夜は子供みたいにむくれてそっぽを向いた。
あたしはそんな十夜が可笑しくてクスクスと笑った。
教育係でもある橙伽さんの前だと、いつも大人びた十夜が何だか年相応の男の子みたいで……
それが何だか、嬉しかった。