――十夜――
「連絡が取れねぇのは間違いねぇんだな…?」
人気のない屋上でケータイに耳を傾ける。
聞こえて来たのは灰斗の悲痛な声……。
グッとケータイを握る手に力がこもる。
ミシ…という音にハッとして、その力を弛めた。
自分の力でそのまま握っちまったら、通話が終わる前に壊してしまう。
全く…、外れをしらねぇ自分の直感に虫酸が走る……っ。
乱暴な素振りでケータイを切った。
「……クソが……っ!!!」
思わず吐き出した言葉はこれまた酷く乱暴だった。
全くもってしたたかなアイツらしいやり方だ。
直接、祈咲に近づけねぇと端からふんで……
親友の鈴木萌花に手を出しやがった……!!
鈴木は昨日、学校帰りに灰斗と別れた後から連絡が取れないって話しだった。
「関係のないヤツまで巻き込みやがって!」
いよいよ……
祈咲を手に入れるために手段は選ばねぇってことか。
祈咲には話せない……
鈴木が紫月に連れ去られたことを聞けば
あいつは飛び出して行きかねねぇ……!
それは紫月の思う壷だ。
どうする?
ただ、
アイツの思い通りにはさせねぇ……!!