「それじゃあ、あの木のてっぺんに先についたほーが勝ちっ!」
「蒼なんかには負けねーもんっ!!」
「木登りは紅よりおれのが得意!」
じゃれあう二人を微笑ましい気持ちでクスクス笑いながら見つめた。
気持ちが嘘みたいに落ち着いていた。
「…姫君。」
「………!……橙伽さん…。」
不意にかけられた声に少し驚いて振り返れば、そこには橙伽さんがいつもの穏やかな笑みを浮かべていた。
「驚かせてしまいましたね。」
橙伽さんは少し苦笑を浮かべてあたしに軽く頭を下げた。
「い…いいえ!
あの……何か……?」
あたしは慌てて首を振って、でもそれが気になって首を傾げながら聞いた。
「お礼を、言いたかったのです。」
「お…お礼……ですか……?」
予想外の言葉にあたしは目をまんまるに見開いた。
あたしからするお礼はいくらでもあるけど…されるお礼は、情けないけど心当たりがない。
「紅刃と蒼刃を……元気にして下さいました。」
「え…?」
思わず、じゃれあう二人に視線を向ける。
そこには元気に駆け回る二人の姿…
元気に…って、
どういうこと……?