「……祈咲……泣くな。」
「……っ。………ぅー…っ…」
十夜はポロポロと涙を流すあたしの頬にそっと手を添えて、
眉を寄せて…気遣わしげにあたしを見つめた。
あたしは、胸の中いっぱい……切なくて切なくて堪らなかった。
紫月さんに出逢った時に感じた苦しいほどの切なさは…
名もないあたしの消えてしまった姉妹のものだったんじゃないかって…
事実を知った今……そう思えて仕方なかった。
魂のほんの一欠片をあたしのナカに残してまで、出逢いたかったんじゃないの……?
決して結ばれることのない……愛しい狼に。
あたしを通して…彼を見て…あなたは千切れそうなほどの切なさに胸を痛めたの……?
今もあたしの魂に、あなたの欠片はあるのかな……?
だったら……
あたしはあなたの為に……
「…何をしてあげたらいいの……?」
「祈咲……っ。」
泣きながらつぶやくあたしを十夜は痛いほど抱きしめた。
あたしの魂に眠るほんの一欠片の《運命の花嫁》
哀しすぎるあなたの為に……あたし、何かしなくちゃ……。
だって、あたしの双子の姉妹なんだもん……。