とりあえず、荷物を運び込むために変な不安を感じつつも十夜の部屋に行く。
必要最低限の物しか置かない十夜の部屋は、大きな本棚も…なにもかも変わりなかった。
十夜のいい匂いに満ちた部屋は、不安を全部拭ってくれるかのようだった……。
それにしても
お布団も何も置いてないけど、あたし…どこで寝るの?
なんてことを思っていたら
「おまえの部屋はこっち。」
「………!」
十夜はスウ…と続きになっている襖を開けて
そこには、純和風の部屋にお洒落で可愛らしいモダンな和洋折衷の……女の子の部屋があった…。
「……ここ……どうして……?」
あたしは呆然と十夜を振り返る。
「…実は、少し前に用意させてた。」
十夜はちょっと照れたようにそう言った。
「それって……」
あたしがここに来ることが決まる前から?
「言っただろう?…俺は、早くおまえを拐いたかったんだよ……。」
「………っ!」
あたしの顎に手をかけて、じっと瞳を見つめながら十夜はそう甘く囁いた……。