あたしが狼のふわふわな首に頬を擦り寄せた時だった。
「……落ち着いたか?」
「?」
あたしは思わずキョロキョロと辺りを見渡した。
今の……誰の声?
すっごく近くで聞こえたような……?
でも小ぢんまりとした人通りのない夜の公園には、あたしと狼しかいない。
「何をキョロキョロしてんだ?………俺だよ」
「……!?」
それは聞き惚れてしまいそうなほど、低くて甘い美声。
恐る恐る声がする方にギギギと首を回して
――――横たわっている狼に視線を持っていく。
狼は美しい黒い瞳をひたとあたしに向けて
「………探したぞ。俺の嫁」
――――その大きな口から、甘い美声を放った。