暫くして
十夜のところにやって来た橙伽さんはものすごく神妙な面持ちで、明らかに何か重要なことを掴んだようだった。
「……言え、橙伽。何を掴んだ……?」
少し緊張を含んだ十夜の重々しい声に、橙伽さんは片膝をついてひざまづいた。
「申し上げます……。三百年ほど昔の文献に、気になるものがございました。」
「真神の歴史にか……?」
十夜は微かに声に緊張を含めた低い声で聞いていた。
「は…。双子の花嫁の記述です。」
「………双子…?」
橙伽さんによると
かつて、双子の《運命の花嫁》と巡り合った人狼がいたのだとか………。
そして、双子の片割れは極稀に、魂の一部を共鳴していることがあるのだという。
互いの魂により引かれ合う花嫁と狼。
ほんの一部の魂の共鳴により、唯一無二であるはずの狼と花嫁の関係を覆すのだと、その文献には書いていたらしい。