そして更に十夜は言葉を続ける。
「…但し、まだ殺るな…。生きたままで連れて来い。」
「「………!!?」」
黙って十夜の言葉を聞いていた人達がそのセリフに急に戸惑ったようにざわめき出す。
「若様…!納得出来かねますぞ!?
前代未聞の若様の花嫁を狙いし一族の裏切り者に……!
そのような情けを…」
「十年近く花嫁を探し続けた男に同情はいたしますが…
かといって人の花嫁に手を出すという裏切りに対して生ぬるい…!」
次々に上がる不満の声を十夜はただ黙って聞いている……。
「………。」
そして
ゆっくりと立ち上がり……
そこにいる全員を目を細めてゆっくりと見渡した。
「うるせぇんだよ……。
まさかてめぇら、俺の獲物に手ぇ出すつもりでいる訳じゃねぇよなぁ…?」
「「………!!?」」
決して荒気はしないその低く響く声に……騒いでいた全員が凍りついたかのように口を閉じ青ざめた。
十夜は再び鎮まりかえった彼らに向かい…
「同時に花嫁に関する全ての情報を集めろ。
いいか?おまえら…どれだけ些細なことでも構わねぇ…
全ての能力を使って、俺への忠誠の証を見せてみろ……?」
静かに響き渡る凛としたその声に、全員…息子ほど歳の離れているだろう十夜に向かって
片膝をつき、……一斉に頭を下げた。
「………。」
十夜はニヤリと不適に笑い…その歴然とした格の違いを、見せつけた。