「「………姫君ーーーっ!!」」
「………!!」
呆然と座り込んだあたしの意識を覚醒させてくれたのは、聞き覚えのある可愛い二人の声だった。
「姫君……っ!?しっかりして!」
「姫君……っ!?どっか痛いのっ!?」
あたしの前に現れたのは赤毛と青毛の二匹の子狼……?
「………べ…紅ちゃん…?蒼ちゃん…?」
あたしがやっと声を出すと二匹はホッとしたようにぶんぶんと元気にしっぽを振った。
「「…よかったぁ~~~っ!!」」
そう言ってあたしの顔にスリっとその鼻先をすりよせた。
あたしは二人が来てくれたことを実感すると、やっと安心して…二匹の子狼をぎゅっと抱き締めた。
「若様から頼まれたんだよっ!ねっ?蒼!」
「そうだよっ!若様が姫君に良くないことがあるかも知れないからおれ達に守ってくれって……!なっ?紅!」
二匹は心なしか興奮した様子で、一気にあたしに話してくれた。
「十夜が……。」
ポツリとつぶやくと……逢いたくて堪らなくなった。
離れている間も、十夜はあたしを気にかけて…守ってくれたんだ。
「…………っ。」
「「……姫君ー?」」
あたしは二匹を抱き締める手にぎゅっと力を込めて、十夜の艶やかな黒い毛皮を思った。