一人呆けたように公園の隅っこにぺたんと座り込んでしまってるあたしのほんの3メートル先には
月の光に黒く輝く大きな獣。
まるで見つめあってるみたいにお互い視線をそらさない。
犬……?
ううん……違う。
もっと大きいし、ふさふさした黒い毛に覆われた姿はしなやかな筋肉がついているみたいに見える。
もしかして
「…狼……?」
狼……だよね?
でも、狼ってそもそも日本にいるんだっけ?
動物園から逃げ出したヤツとか…?
にしても
こんなでっかいヤツだった?
あたしの頭に浮かぶのは疑問ばかり。
狼の黒くて澄んだ瞳はただあたしをまっすぐに見つめていた。