「ちぃ姉ちぃ姉~」
休憩が終わる間際 めぐみさんが走ってきた
「どうしたの?」
朝撮影があったのに 眠そうではない
「あのねちぃ姉。これ神田さんも言ったんだけど、…マ…じゃなかった美麗さんに会えるよ。9月の半ば頃かな。」
「…そうなの」
「神田さんに頼まれててね。ようやくパパが折れたの、ごめんね。遅くなっちゃって…」
わたしは首を振った
「ちぃ姉は…会いづらいかもしれないけど。美麗さんは本当に会いたがってるから。」
「うん…めぐみさん、あのね。」
なんであの人は わたしを
置いていってしまったのだろう?
知っているかわからないこと
めぐみさんはキョトンとした顔で見ている
だめ…
めぐみさんには
怒りなんかぶつけたくない
ぶつけられない…
「…ちぃ姉?」
「あ……いいの。教えてくれてありがとね」
うんと めぐみさんは頷いた
9月の半ばに会える…
わたしをすてたかもしれない母と
唯一、家族と呼べる人と
でも会わなきゃならない。
なにがあっても…
理由を聞くために
お父さんが言わなかった
言葉の続きを聞くために……