いよいよ
クランクイン当日
あたしたちスタッフは
『くじら』の撮影現場にいた
「……」
「あんたキラキラし過ぎ…。」
美帆は冷静に
突っ込んでくれた
「だって…く、『くじら』の小説すっごいよかったんだから!美帆も読んだでしょ」
「時代物でしょ。先生と生徒の恋愛ー、昼ドラ並に泥っドロよね。」
『くじら』
時は大正末期…
お金持ち令嬢と
訳有り先生の恋愛
確かに昼ドラ並だけど…
いい小説だった
「町谷さんは、現実主義だからなぁ…。」
「ちょっとちょっと千広さん、けなさないで下さい」
「誉めてるんだよ。学生時代からクールだったからなぁ、町谷さんは…」
「クールて、千広さんもじゃないですか。今でも携帯恐怖症でしょ」
美帆はずばっと返す
千広先輩は苦笑していた
「神田さん、一条さん入りまーす」
スタッフの声が響いた
今まで話してた
スタッフはシンと静まった
「……ようやく到着な訳。随分偉くなったわね…」
美帆はぶつぶつ言う
翔太君と …
女優さんが入ってきた
「えー、藤堂久白役・神田翔太さん。四条瑠璃子役・一条めぐみさん、クランクインです」