自分が利用されていることは知っていた
利用。
知っていたんじゃない
そういうものは肌で感じるものだ
もう70歳なのだ
運送業をはじめて
様々な荒波に揉まれ
不景気を迎え
妻と娘は出ていってしまった
そんなとき、小さなスナックで出会ったのが道子だった
綺麗な女性だと思った
大きな目は猫のようで
稟とした女性だった
全体の雰囲気は落ちついて、冷たさを感じるものの
喋ると天然なところがあり
男の扱いが上手かった
本当に上手かった
だから金を貸してやった
店も持たせた
そんなことを思い出していると ハンドルを握る自分の手にひどく力が入っているのに気づいた
道子は優しい女性だ…
そして美しく若い…
道子のことを悪く考えるのはよそう
そして道子が好きな曲を
流してアクセルを踏んだ