意外にもあんなに強引だった久留生海斗の、私の肩に置いている手が緊張してるのが分かる。


「今さらこんなこと言っても信じて貰えないかもしれないけど……」


久留生海斗はリビングに戻る途中、私にそっと耳打ちする。


「ずっと、君のこと好きだった」

「えっ!!!」


突然の彼からの告白に、頭をガァァァァーーンと岩で殴られたような衝撃を受ける。


「スカート捲ったのも、髪の毛を引っ張ったのも舞香ちゃんだけだ」



そう言われてみれば……


確かに……そうだった……かも。



今、初めてその事実に気付く。


リビングでは、歓喜と悲鳴でみんなが興奮してる。


「こんな形でキスしたくなかったけど……どんなチャンスも今は逃したくない」


リビングの戸を開けながら、彼は笑う。


「もう、苛めないから赦して……」


彼の目が伏し目がちになり、段々近づいてくる。


リビングの中央に行くのが待ち切れなかったかのように、久留生海斗の唇が静かに私の唇に重なる。



リビングが水を打ったように静かになる。


長い長いファーストキス。

そっと触れているだけなのに、頭の芯が痺れてくる。

1分経過5,000円。
2分経過10,000円。
3分……

頭の中が真っ白な灰になる。


頬が上気し、もう立ってなんかいられない。

3分ってこんなに長かったの?

海斗が私の頭の後ろに手を添えると、更に私の唇を貪るように彼の唇が絡みついてくる。

い、息が出来ない。

ギブ!ギブ!!

どう考えても、もう3分は経過してるって。

カップラーメンだったら、いー加減伸びて……

ん?

んん??

まっ、まっ、待って!!

なんか入ってきた。

ちょ、ちょ、ちょちょちょっと待っ……



舌、入れてきたーーーーーーー!!!!



どうしよう。

殴りたいのに力が入らない。

胸がドキドキして、このままだと軽く心臓発作で死ねる。

今まで敬語なんかで、彼との間に必死に距離を取って来たのに。

あの努力の日々を……たった一瞬のキスで海斗は木端微塵に撃ち砕いてしまったんだ。


唇をようやく離してくれた海斗が「好きだ」と吐息交じりに小さく甘く囁く。

「……きらい。海斗なんか、だいっきらい!」

力が入らなくてズルズルと床にヘタリ込む私に手を差し伸べる久留生海斗の顔は、ふーんなんて感じで片方の眉がピクリと動く。


「嘘つき。俺にしがみついてキスに応えてくれてたくせに」


キッ!と睨み返したいのに……。


ようやく解放された唇は反論する力も失ったまま、私は真っ赤になった頰を両手の平で覆い隠す。


「やっと捕まえた」


久留生海斗が私を抱き締めて、耳元にキスをする。


「さっき貰ったヤツ、今度試してみようね」と囁く彼に、

私は真っ赤になって「それは、無理です!!」(←やっぱり敬語)と即答した。


そんな2人が結ばれるのは、まだまだずっとずっとずーーーーっと先のお話(海斗君の試練はまだまだ続く~)。



チャンチャン♪