ー3年後ー
「なんか緊張するな…」
静かに音楽が流れる車の中でネクタイをきつく締め直すキョーさん。
「大丈夫だよ。もう何回も会ってるんだし。それにキョーさん、お母さんのお気に入りだし。」
そう、私のお母さんはキョーさんのことが大好きみたいだ。
これはお姉ちゃんの家庭教師時代から変わらないこと。
「結婚の挨拶なんて初めてだからなぁ。」
「そんな何回もするもんじゃないでしょ。」
「あぁ…そっか。」
こんなに緊張しているキョーさんを見るのは貴重かもしれない。
なんだか可愛い。
「おい、何にやけてんだよ。こっちの身にもなれ。」
ハンドルを握っていない左手でポンっと軽く頭を叩かれる。
大した痛くもないが大袈裟に痛がってみる。
「いたーい!!
暴力反対!…結婚やめようかな。」
「バカ。冗談でも心臓に悪い。」
「嘘。早く結婚したくてソワソワしてる!早く藍沢柚になりたい。」
私がそういうと、さっきと同じ手で頭をポンポンと撫でてくれた。
早くこの人と一緒になりたい。