「…でもさ、もう大丈夫なんじゃん?」



ぼんやりと当時のことを思い出していた俺は、悟の声で我に返った。



「そこまで頑張る必要、ないんじゃない?」


「……え?」


「大学はそういうの関係ないだろうし…。何より、
もう十分、先輩に“つり合う”男になったと思うぞ?…航は」



いきなり、どうした?

悟はひどく真面目な顔をしていた。



「確かにあのときは…
たった1歳とは言え、高校生と中坊で…お前が引け目を感じるのもわかる気がしたよ?」



相手は“あの”みさき先輩だし…と小さく付け足してから、続ける。



「それを早く埋めようとして、航がすっげー努力してたのは知ってるし、納得してた。」



コイツ…
気づいてたんだ?

意外に鋭い?



「でもさ、あのときと今じゃ、ずいぶん状況が変わってるじゃん?」


「……え?」


「お前と先輩は、めちゃくちゃ“お似合い”だよ。
文句の付けようがないくらいに、な。」