「え…？」



ゆっくりと。
俺から顔を離して。

それでも瞳はそらすことなく、まっすぐにこちらを捕えたまま。


彼女は続ける。



「航くんの中が私でいっぱいになったら、他のことなんて考えられなくなるでしょ？」


「え…？」


「私はいつも、そうだから。」



それだけ言って、
みさきは俺にぎゅっと抱きついて胸に顔を埋めた。


……どういう意味？

みさきの言わんとするところがイマイチわからない。

でも…



「……ありがとう。」



俺は再び、その華奢な身体を抱きしめ直した。



みさきに触れると安心する。


触れ合って、その存在で満たされている間は、
さっきみたいな不安を感じることはない。


だから、みさきの言うことは間違ってはいないわけだけど…



「辛くなったら、いつでも言ってね？」


「…ん？」


「無事に受験が終わるまで、私も協力するから」



……明らかに、カンチガイしてるよね？



「私にできることなら、なんでもするからね？」